私のイデオロギー1

ジェレミ・ベンサムとジョン・スチュアート・ミルの功利主義(utilitarianism)における
「最大多数の最大幸福」は、私が信奉するイデオロギーの第一に位置づけている。

utility とは本来、「有用性」「効用」「満足」「幸福への寄与」を意味する言葉である。
しかしこれを日本語で「功利主義」と訳すと、「功利」という語がもつ
打算的・損得勘定・目先の利益といったニュアンスが前面に出てしまい、
冷酷で計算高く、人間味のない思想であるかのような印象を与えがちだ。

そのため意味的には、「効用主義」や「幸福最大化主義」(チャッピー案)と呼ぶ方が適切だと思う。
ただし、新しい訳語はそれ自体に説明を要するため、ここでは便宜的に通称である
「功利主義」を用いることにする。

この主義がめざす「最大多数の最大幸福」は、極端な形で表現すれば、
「自分は損をするが、多くの人が救われるなら、それを選べ」
という倫理的要求にまで行き着く。

功利主義は、考え方としては非常に完成度が高い一方で、いくつもの深刻な問題を抱えている。
たとえば、

  • 幸福の質の問題
    (快楽はすべて等しいのか。知的幸福と肉体的快楽は同じ重みなのか)
  • 比較不可能性
    (Aの幸福10とBの幸福10は同じと言えるのか。内面的体験をどう比較するのか)
  • 将来世代の扱い
    (未来の幸福はどう割り引くのか。まだ生まれていない人の幸福をどう考えるのか)
  • 少数者の犠牲問題
    (多数の幸福のために、少数を犠牲にしてよいのか)
  • そもそも幸福をどう測るのか

などである。

それでも功利主義は、個人の恣意や権力による判断ではなく、
社会全体の苦痛と幸福を視野に入れ、
「誰の幸福も原理的には無視しない」姿勢を貫こうとする思想である。

その点において、功利主義は欠陥を抱えつつも、
なお指針として掲げるに値する理想だと、私は考えている。

幸福の総量を見よ(理想)。

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