前章では、1960年から2025年にかけて、裁判所の全新受事件数が約545万件から約389万件へ減少したことをみた。
しかし、もっと大きく変わったものがある。
裁判所が扱う事件の中身である。
全新受事件数に占める割合を比較してみる。

これを大きく二つにまとめると、変化はさらに鮮明になる。
1960年
刑事+少年 76.0%
民事・行政+家事 24.0%
2025年
刑事+少年 25.5%
民事・行政+家事 74.5%
ほとんど逆転している。
1960年には、裁判所が新たに受け付けた事件の約4分の3が刑事・少年事件だった。
それが2025年には約4分の1まで低下した。
反対に、民事・行政・家事事件は約4分の1から約4分の3へと増えている。
第一章でみたように、これは人口の増減だけによって生じたものではない。人口比でみても刑事・少年事件は大きく減少し、民事・行政、家事事件は増加している。
つまり、この65年間に起きたのは、単なる「裁判事件数の減少」ではない。
司法が扱う問題の重心そのものが、大きく変化した。
犯罪や少年非行を扱う事件の比重が低下する一方で、個人や企業などの権利・利害を調整する民事・行政事件、そして家族・相続などを扱う家事事件の比重が大きくなった。
もちろん、この数字だけから、その理由まで決めることはできない。
しかし、「裁判所は何を扱っているのか」という視点でみれば、1960年と2025年では、その姿がかなり違っている。
そして、そのなかでも特に目につくのが、家事事件である。
1960年には全体のわずか6.2%だったものが、2025年には31.7%。今では新受事件のおよそ3件に1件を占めている。
なぜ、家事事件はこれほど増えたのだろう。
次は、その中身をみてみたい。
